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CMS Watch : CMS選びの5大間違い

2005年2月15日 掲載

リサ・ウェルシュマン (Welchman Consulting主任コンサルタント)

2003年1月26日

原文: 5 Biggest Mistakes in CMS Selection [cmswatch.com]

このコラムを読んでいるからには、みなさん、ウェブCMSのマーケットにいるのだろう。

すでにインターネットをしらみつぶしにあたり、CMSベンダーのサイトにもアクセスして、いくつかのレポートもダウンロードしたかもしれない。CMSソリューションを提供するベンダーの多さにびっくり仰天し、場合によってはCMSをテーマにしたカンファレンスにも、一度ならず足を運んだかもしれない。

さらには、2、3のベンダーを会社に呼び、製品デモを見て、正式なソリューション提案まで受けた人もいるかもしれない。もしそうだとしたら、CMSの値札が与えたショック症候群も、もう克服したことだろう。そしてついでに、会社のサイフの紐を握っている人たちを説得して回るというエクササイズも経験済みのことだろう。CMSは、さまざまな疑いにもかかわらず、最終的には意義ある投資見返りを生むのだと、説いて歩いたはずだ。そしてこの一連の作業の後に、ふと気づいた。いったいどのCMSが自分の会社にとってベストなのか、何とかして見つけ出さなければならないと。

世の中で最も賢いウェブサイト技術の「グル」やコンテンツ開発者、さらにはユーザインターフェースの専門家たちが一生懸命、努力しているにもかかわらず、CMSの製品選びのプロセスには、間違いを犯してしまいがちな点(実際、間違いが発生する点)が依然としていくつかある。

現場最前線からの実話集

私はここ数年にわたって、企業がCMSパッケージを選ぶのを手伝ってきた。そしてそのなかで、とんでもない大間違いを少なくとも2、3は見てきた。

一度、フォーチュン500に名を連ねる企業と仕事をしたことがある。この会社では、会社全体のコンテンツマネジメントを支えるCMSを購入するにあたって、3つのプロジェクトが別々に進行していた。偶然にもそのうち2つが私にコンタクトしてきて、CMS選びのコンサルティングを受けたいと言ってきた。その後、ちょっとしたリサーチ努力で、3番目のプロジェクトが存在していることもすぐに明らかになった。

ある郡の政府から、CMS探しを手伝ってほしいと頼まれたこともある。この政府は、非常に洗練されたインタラクティブなウェブを支えるCMSを探しているのだと言った。けれど、彼らが持ち出した要件には、唯一、とても難しい点があった。研修も実装も含めて、全部の費用を5000ドル以下に抑えたい、と言ったのだ。

また別の会社では、かなり長ったらしい製品のマーケティング資料をウェブ化できるCMSを探していた。彼らの望みは、CMSが何とかして、印刷物をウェブ・フレンドリーなコンテンツに変身させてくれることだった。

これらのエピソードを聞いてみなさんが笑ってくれることを、私は期待している。でも、もし笑えなかったとしたら、CMSの製品選びにおける5大間違いだと私が思っている点について、もう少し読んでみてほしい。それから、もしもすでに笑えた人も、やっぱり続きを読んでみて損はしないはずだ。

1. 自分に必要なものをソフトウェア・ベンダーに決めさせてしまう

第一の間違いは、至極単純に見えるかもしれない。けれども、あまりにも多くのCMSバイヤーが、商品選びのプロセスを開始するにあたって、製品デモやウェブベースのセミナーに参加し、ベンダーが作った製品レポートやケーススタディを見ることから始めてしまっている。こうした情報は、商品選びのプロセスの後半では役に立つかもしれないが、最初の段階では、ベンダーからのインプットを与えられる前に、自社のCMSニーズを理解しておくことが重要だ。

ベンダーの営業やマーケティング担当者は、顧客が抱える問題を、顧客に代わって嬉々として定義してくれるだろう。これは、彼らが生まれながらにして人を巧みに誘導する性質を持っているからでは決してない。見込み客の問題を自社の製品が解決できるように定義するのは、ある意味、セールス術の「基本のキの字」。たいていのベンダーは、親切にも見込み客にさまざまな定義やドキュメント、そしてROI(投資収益率)の計算表などまで与えて、CMS要件の作成や正当化を手伝ってくれるだろう。確かに、これら過去の経験から導いた情報には、いくらかの価値がある。しかし、これらの方法論やデータ、アプローチは、そのベンダーの製品経験しか反映していない。

これらのツールを使いたくなる気持ちも分かる(誰だって、要件をドキュメント化している時間なんてない)。しかし、このプロセスでは、自分で要件を作成し、どのベンダーにも依存しない中立的な立場のアドバイスを受けたほうがいいだろう。長い目で見れば、このほうが時間の節約にもなる。

2. 広範な部署からメンバーを集めてチームを作ろうとしない

これはもしかすると、ウェブCMS選びにおける最大の間違いかもしれない。多くの場合、ウェブCMS製品選びに当たるチームは、実際のシステム導入のことまであまり考えず、非常に“お気楽”に結成されている。特によくあるのは、コンテンツチームかウェブサイトのテクニカルチームのどちらかが、相手チームに相談することもなく、独立独歩で製品選びのプロセスを取り仕切ることだ。さらにもっと多いのは、2つのチームの間でバランスを欠いている例だ。

どのような状況であれ、CMSの購入は、コンテンツとテクニカルの両方にまたがる問題だ。最初の要件定義の段階からその先の段階に至るまで、両方のチームが関与しつづける必要がある。コンテンツチームが早い段階で除外されていれば、盛り込まれる要件は、テクニカルチームのニーズだけを汲んだものとなりがちだろう。一般的に言って、このような場合、ユーザインターフェースとワークフローの問題が軽視されるようになる。また、テクニカルチームが初期段階で除外された場合は、ユーザのニーズは反映されるが、技術的な要件がどこかに押しやられてしまう。どちらの場合も、CMSの導入プロジェクトが失敗に終わる確率はずっと高くなる。ニーズを無視されたチームがサポートを与えなかったり、プロジェクトを完全に拒否したりするためだ。

商品選びをするチームにさまざまなメンバーを加えるということは、コンテンツ面とテクニカル面のユーザに限ったことではない。CMSソフトウェアの導入によって影響を受ける幅広い関係者のことを考えて、早くからプロジェクトに巻き込むことが重要だ。これには、組織内のいろいろなビジネス部門のほか、経理や人事といった機能を持つ部門・グループも含まれる。このようにたくさんの人を介入させたうえでソフトウェアを選ぶとなると、人が少ない場合に比べてプロセスは長く困難になるかもしれない。けれど、これをしなければ、結果として誰のニーズも満たさないソフトを買ってしまったり、それよりももっと悪いシナリオを招くリスクを負うことになる。CMSによって影響を受ける人々が、ソフトの導入を成功させるために適切な確認作業をしないまま事が進むために、こうしたリスクが生じるのだ。

3. システム導入にまつわるコスト総額を理解していない

CMSのソフトウェア・パッケージには、非常に高価なものもある。しかし、ソフトウェア自体のコストは、コスト総額のわずか半分にすぎない(4分の1ということも多い)。CMSのソフトウェア導入に際しては、サービス、サポート、研修、実装といった費用がかかるためだ。

CMSベンダーのなかには、専門サービス料で全売上高の50%以上を稼ぎ出しているところもある。一般的には20%前後というのが妥当だろう。専門サービス料(そのほか、研修やサポート料)が安いからといって、必ずしも費用対効果が優れたソリューションだとは言えないが、CMSの導入後2年目以降に、これらのコストがどの程度になるかを考えておくのは重要だ。CMSバイヤーの多くは、2年目、3年目に1年目と同程度かそれ以上の専門サービス料を払っている。

また、社内の人件費も考慮しなければならない。ソフトウェア導入後、外部の助けなしでどこまで処理できるのだろうか(あるいはしたいのか)。幅広いスキルを備えた比較的大きなテクニカルチームが社内にあるのであれば、導入したシステムをサポートし、カスタマイズし、アップルグレードしてくれる人材がすでにいることになる。反対にテクニカルチームが比較的小さいのであれば、CMSベンダーの専門サービスを利用しなければならないかもしれず、これは高くつく可能性もある。しかし、社内でやったからといって、決して安く上がるわけではないことも確かだ。実際のコストは他のライン(他部門のスタッフなど)のなかに隠されているとしても、コストがかかっていることには変わりがない。

社員研修は、どの程度の頻度で行わなければならないのだろうか。手頃な価格で買えるEラーニングのパッケージがあるのだろうか。それとも、CMSソフトウェアの一番基本的な機能を覚えるだけでも、大都市で開かれる3日間の社外研修(つまり、高くつく)に参加しなければならないのだろうか。

自社に必要なサービスやサポートのパッケージは、どのようなものなのか。それらの価格はどうなのか。ほとんどのベンダーは、サポート料の設定を初年度のコストのパーセンテージで計算するが、このコストは、サイトやユーザベースが拡大するにつれて、大きくなる可能性も持っている。

4. コンテンツマネジメントを戦略的に考えていない

おそらく、CMSを必要とするのには差し迫った理由があるのだろう。ソフトウェアを評価する際に、この差し迫った理由だけにこだわるのは簡単だ。けれど重要なのは、将来、このCMSを使ってどのような機能をサポートしたいのかを考えることだ。例えば、コンテンツを再配信する計画があるのだろうか。あるいは、1年以内にEコマースの機能をサイトに導入するという目標があるのかもしれない。はたまた、会社の戦略の一部として、頻繁な吸収合併が組み込まれているのかもしれない(そうであれば、スケーラビリティがあって、レポジトリの統合に絡んで確かな方法論を提供しているCMSが必要になる)。

要件を各方面から集めてくるプロセスの一環として、すでに分かっている(ある程度、推測的な)将来の要件を盛り込むよう、確認することが大切だ。そうしなければ、最初に購入したCMSから十分な投資見返りを得ないうちに2つ目のCMSを買う必要性に迫られる、などといった事態すら起こり得る。

5.  ウェブ・コンテンツマネジメントの限界を理解していない

ウェブ・コンテンツマネジメント、ドキュメント・マネジメント、アセット・マネジメント、知識マネジメント……。これらの違いはどこにあるのだろうか。多くのベンダーは、関連するソリューションを混ぜ合わせて、理解できないあいまいな代物を作り出し、これを使えば会社が抱えるすべての問題を解決できると主張している。しかし、そんなことはまずあり得ない。「エンタープライズ・コンテンツマネジメント(ECM)」という言葉が出てきた時には、安全な丘に駆け上がりたいという気持ちに駆られた人もいたかもしれない。もしそうだとしたら、その人は確かな本能を持っていて、眼前の問題に立ち向かうのに十分な素質があると言えるだろう。

CMSのなかには、複数の情報マネジメントに対応できるものがあるのは事実だ。しかしほとんどの場合は、そのなかのどれか1つ、良くてもせいぜい2つの中核機能において優れているにすぎない。つまり、CMSの製品選びで基本となるステップは、製品パッケージが提供する機能のうちどれが本当の中核機能かを理解すること、そして、それが自分の会社の最も重要な機能に合致しているかどうかを見きわめることだ。

最後に、ウェブCMSを導入したからといって、クオリティの高いコンテンツを作成したり、優れた分類法を開発できたり、骨の折れるインテグレーション問題が解決できるわけではないことを理解してほしい。CMS製品を選ぶ前に、それとは別に取り組めるエクササイズ、あるいは取り組むべきエクササイズががある。コンテンツの分析、メタデータ分類法の開発、ハードウェアとソフトウェアのインフラ分析などは、適切に行えば、どのようなタイプのコンテンツマネジメント・ツールが自社のウェブ・インフラにとって必要かを明らかにする作業に役立つだろう。

CMSを選ぶにあたって、ここで紹介した間違いをみなさんが犯さないようになることが、私のささやかな願いだ。業界のベテランに言わせれば、このような教訓は、どのタイプのソフトウェア選びにも当てはまるのだそうだ。確かに、それも一理ある(ただしCMSは、社内に幅広く影響するという点で特殊性があるのも事実)。だから、製品選びをする時は、怖がらずにソフトウェア選びの経験がある社員の力を借り、必要に応じて外部のコンサルタントにも助けを求めること。みなさんのCMS選びがうまく行きますように。そして、うまく行っているかどうか、ぜひ私に教えてほしい。

Lisa Welchman photoリサ・ウェルシュマンは、Welchman Consultingの設立者兼主任コンサルタント。同社は、企業や政府機関の顧客に対して、コンテンツマネジメントの導入前サービスを提供している。


本サイトに掲載しているCMS Watchの記事は、CMSWatch.comより許可を得て、翻訳・転載しているものです。

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