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ダン・サファー パーソナルブログ「O Danny Boy」:列車の模型とインタラクティブシステムのデザイン

2008年7月 4日 掲載

Dan Saffer
Adaptive Path のインタラクションデザイナー、インタラクションデザイン修士、インタラクションデザイン協会(IxDA: Interaction Design Association)理事

列車の模型とインタラクティブシステムのデザイン

原文: O Danny Boy [odannyboy.com]
投稿日: 2004年9月18日

ここ40年間ほど、僕の祖父は毎年のクリスマス休暇にアメリカンフライヤーの鉄道模型セットを組み立てている。この模型は、床上30cm、広さ3m×1.8mほどの土台に置かれており、とても美しくて面白い列車、自動車、家々のバリエーションや、2つの輪をなす線路上で動き回る小道具が備わっている。これは第二次世界大戦直後のモデルで、貨車のうちの1台には、ロケット弾が発射台とともに乗せられている。

模型セットには、その模型セットのための制御装置が備わっている分厚いパネルがある。主電源からロケット着火ボタンを押すときに使われる警笛に至るまで、あらゆるものが合計25個ほどの制御部品となってそこにある。祖父は、僕がその列車を動かせるようになる時期について確信しており、それはたいてい6歳か7歳くらいになった頃だろうと考えていた。もっと小さな子供でも警笛を鳴らしてみたり、手旗信号を振る人形をいじったりすることはできるが、自分自身で実際に列車を動かすことはない。列車を動かすためには、列車のスピードを制御する(通常は、決められた時刻に2台の列車が走っていたのだ)だけでなく、列車の線路を切り替える方法も知らなければならない。誤った線路に切り替えれば列車が衝突してしまい、さらに悪い事態になれば、その後何年もその列車を動かす権利を失う結果になるかもしれないのだ。

制御装置が付いていない模型セットほどつまらないものはないだろう。スイッチを入れれば列車が自動的に動くというのなら、お楽しみはほんの5分程度で終わってしまう。しかし、列車を動かしたり、信号灯や警笛といった細かいもの1つひとつを通じて環境全体をインタラクティブに制御することができれば、何時間でも楽しむことができる。スキルのレベルがどの程度であれ、その人が何かを行うのに十分なバリエーションは用意されている。たとえ単に警笛を鳴らすだけだとしても、それもバリエーションの1つなのだ。

僕は、この列車模型のセットについてずっと考えてきた。というのは、ここには大きなシステムを作ることに関連する、単純な方法が存在しているからだ。「インタラクティビティ(双方向性)」とは、たとえばFlash のアニメーションを見るように、何かが動いている様子をただ眺めることではなく、起こっている何かに対して意味のある形で影響を与えるということなのである(「遊び」には意味があるのだ)。模型セットでは、初めて使う人でもすぐに関心を持って楽しむことができる一方、上級者にはもっと活用できるようなシステムを検討するのに十分なほど、豊富な素材が用意されている。システムを面白いものにすべくインタラクティビティを与えるものとして、目に見える、もしくは目に見えない多様なパーツが用意されているのである。

僕と僕のいとこが決して到達しなかったレベルに、列車システムをうまく組み立てることと、その年に提供されたパーツから列車セットの形態と機能一式をうまくデザインするということがあった。僕が今思うに、それができていたら、きっと列車セットの遊びを「協調的なエクスペリエンスデザイン」という新しいレベルに持っていけたのではないかと思う。最初に列車セットを作った工業デザイナーは、充分に柔軟性を持たせて作ったため、人は様々な異なる方法でそのパーツを組み立てることができた。どんな形態のものが求められているかを判断するのは、それを専門に行うデザイナーに委ねられていた。そのデザイナーが自分の美学を巧みに表現するにあたっては、パーツを変更することができないという制限だけがあった。デザイナーは、それらの形態を組み合わせて新しいものに作り上げ、願わくはユーザーに喜んでもらえて、知的に満足してもらえて、豊かな感性を持ち、美的なニーズにも沿うようなものにしようと考えたのだろう。

僕たちが利用するものや強制的に介在させられるシステムでは、若かった頃に見た模型の列車のように楽しいものは少ない。恐らく、自分たちが若かった頃のおもちゃをもう一度引っ張りだしてきて、再検討するべきなのだろう。そのおもちゃが我々に教えてくれることがあるのかもしれない。

本サイトに掲載している 「O Danny Boy」の記事は、ダン・サファー氏 より許可を得て、翻訳・転載しているものです。

関連サイト

  • O Danny Boy [odannyboy.com] (パーソナルサイト)

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