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“誰でもどこでも”の理念がユーザビリティの原点

2008年8月14日 掲載

DESIGN IT! magazine』vol.1のインタビュー記事「EYES」を掲載しています。

サイボウズは国産グループウェアベンダとしてトップを走り続けている。
同社の「誰でもどこでも」という製品コンセプトを実現する目線や考え方は、企業情報システムにおけるユーザビリティの参考になるはずだ。青野 慶久社長に詳しく聞いた。


サイボウズ 代表取締役社長 青野慶久氏

-国内に広く普及した「Cybouz」ですが、それを支えたコンセプトについて教えてください。

サイボウズが目指したのは、「誰でもどこでも使える」ということです。グループウェアは、特定の業務や部署向けではないので、もしもマニュアルがなかったとしても、10 代でも70 代の方でも同じように使えるというような、ITリテラシーの壁を越えることが必要でした。

-ユーザビリティを重視しているわけですね。

グループウェアの導入に失敗した企業の話を耳にすることがありますが、その多くは、ユーザビリ ティの設計の誤りか、稼働後のレスポンスが悪いということが原因です。機能が不足しているわけではないのに、使い勝手が悪いことで利用者の評価が低くなり、失敗となってしまった大変もったいないケースと言えます。

-ユーザビリティの設計や実装の面で、特に気を配っている部分はありますか?

ユーザーの要求レベルはどんどん変化していますので、4年前と同じことをしていても評価されま せん。その点で、ユーザーの声をかなり重視しています。まず、サイボウズ社内での利用状況を確認します。また、導入企業に課題やニーズを直接ヒアリングしたり、コミュニティやアンケートも積極的に活用しています。

そんな中で最近では、Web 等で展開されている具体的なサービス名を挙げながら、問い合わせをいただくことも多くなってきました。コンシューマー向けの良質のサービスに、企業向けのアプリケーション、そしてサイボウズが逆に引っ張られている状況とも言えるでしょう。

エンドユーザーと運用管理者のユーザビリティを備える

-UIというと、まずはエンドユーザーが対象になりますが、管理者に対してはどのように対応していますか?

元々、Cybouz は「ダウンロードして誰でも気軽に試用できる」ということが前提にあります。これはエンドユーザーと管理者、どちらにも当てはまります。たとえば中小企業では、エンドユーザーが管理者になることもしばしばです。その場合、「管理業務」に割くことができる時間は限られています。こうした状況も踏まえて、エンドユーザーでも基本的な管理が容易にできるように設計しています。

業務系のアプリケーションであれば、ある特定の部門でしか使わないことも多いでしょう。その場合には、導入時に担当者に絞って教育するということも考えられます。ところが、グループウェアは社員全員が使うものですから、同様のやり方では難しくなります。

一方でグループウェアの場合、「ユーザーを明日の朝までに500 人追加する」というような要求も発生します。これに対して、ブラウザ上の操作だけで対応するのは現実的ではありません。そういった時には、ブラウザとは異なるコマンドラインのようなインタフェースも必要になります。

誰でもが使えるという間口の広さに加えて、このような特殊な要求に対する機能的な奥行きも管理者へのインタフェースには求められます。

人間に共通する体験「動作」を機軸に考える

-UIやユーザビリティについて、他社のグループウェアや業務アプリケーションをどのように評価されていますか。

Webアプリケーションに絞ってみると、求められているのは「動作が軽く」「わかりやすく」「できる だけシンプルに」というスタイルだと思います。他社製品については、Cybouzと同様のシンプルな動作と使い勝手を実現するものが増えてきました。

一方、業務アプリケーション領域のWebアプリケーションを見てみると、まだまだこれからという感じがします。B2Cの分野で勝負しているWebアプリケーションでは、「できるだけシンプルに」かつ「動作が軽く」という要件は、必須な条件として実現されていますが、業務アプリケーションにはまだその必要性が伝わっていないようです。

-企業の社内システム部門のUI設計者に向けて、「使いやすさ」を実現するためのアドバイスをお願いします。

何かをしようとする際の体を動かす「動作」は、人間の共通の体験として備わっています。これが、 ユーザビリティの基本になります。

例えば、「iPhone」にしても「Wii」にしても、動作に基づいた体験をもとにUIを構築しています。その現実の動作に基づく体験が効果や効用を類推しやすくさせ、結果として、ここまで「楽しいもの」「使いやすいもの」として広がったのではないでしょうか。コンピュータの操作感の中だけでUIを考えると、どんどん仮想空間の中で複雑になってしまいますので、この点に留意することが必要です。

(聞き手:蒲生 達佳)

DESIGN IT! magazine』vol.1のインタビュー記事「EYES」を掲載しています。


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