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フォーラムレポート

2008年8月26日 掲載

22日

Mr. Dan Saffer photo 22日 ダン・サファー氏

「インタラクションデザイン」という新たな分野—『インタラクションデザインの教科書』の出版を記念して

標題にある書籍の著者であり、インタラクションデザイナーであるダン・サファー氏は、インタラクションデザインは「人間の行為に対するシステムのフィードバックのデザインである」と説明。その重要性や遍在性を、過去・現在・未来に渡り、日本を含む世界の製品・環境事例に基づいて解説しました。デザインプロセスとして、戦略立案〜調査結果の「アイディエーション(アイデア化)」と評価・統合、ユーザーインターフェースの反復的な視覚化と仕様への落とし込み、そして開発作業の監視が必要だと語りました。最後に、自身が所属するAdaptive Path社とMozilla Foundationによる次世代ブラウザーのコンセプトモデル「AURORA」を紹介し、インタラクションデザインの可能性を示唆しました。

バックエンドシステム設計がRIA成功の第一歩

RIA(Rich Internet Application)によるリッチなUIを備える業務システム開発に取り組む株式会社クラスメソッド。横田聡社長によるこの講演では、同社におけるRIAシステム開発の軌跡、それに伴うデザイナーの役割変化などが説明されました。また、ただRIAを採用しただけでは顧客を満足させられないことから、システムとして標準仕様で対応できる範囲の把握、ユーザーの利用環境や制約への意識、ユーザー調査とモックアップ作成の繰り返し、といったことが重要であると強調されました。

デザイニング・エモーショナル・インタラクション

株式会社アクシスの宮崎光弘氏は、雑誌「AXIS」を通じて出会った著名デザイナーらのエピソードを基に、「モノ」にとどまらず、そこで起こる「コト」をデザインするとはどういうことかを紹介。デザイン対象のみを意識するのではなく、それを取り囲む背景・環境を意識してデザインをすることが、プロダクトに限らず、デジタルメディアのデザインにおいても重要であると説明しました。また、宮崎氏が携わった株式会社モリサワのサイトを操作しながら、細部の動きにまでこだわり抜くことが、ユーザーの心地よさにつながると考える、と語りました。

23日

Mr.Dan Saffer photo

23日 講演の様子

アダプティブ・パスにおけるインタラクションデザインの実践 —ケーススタディ:ニューヨーク交通チケット自動販売機、Google マップ、Microsoft Office 2007

ダン・サファー氏による2つ目の講演では、ケーススタディを元に、ターゲットユーザーや既存のデザインに対する思い込みと向き合うことの重要性が強調されました。ゼロから作り出す場合、既存のデザインを改善する場合のいずれにおいても、リサーチを実施して得られたデータを理解し分析したうえで、人に当てはめてデザインする必要性が語られました。また、機能数を極力抑え、ベストプラクティスを用いることで、ユーザーの支払う労力を最小限としながら高い価値をもたらすデザインが可能であることが説明されました。

デザイン主導のシステム開発メソッド

ソシオメディア株式会社のUIデザインコンサルタントである上野学氏は、ユーザーにとっては知覚できるデザインがすべてであり、そのシステム像の定義と実現をゴールとすることこそがデザイン主導のシステム開発であると説明。ユーザーの知覚とは無関係に仕様が実現されても、ビジネスオーナーにとっての成功にはならないことを指摘しました。そして開発プロセスの最初には、デザインコンセプトを確定し、そこからすぐにUIを作成すること、デザイン検討は少人数で実施することなどのポイントを紹介しました。

インタラクティブジェスチャー —タップはクリックの新しいかたち

iPhoneやWiiのように「ジェスチャー」をUIデザインに取り入れることが世界的な流れになりつつある現在。ダン・サファー氏は、最新のコンセプトモデルを紹介しながら、人の身体を積極的に活用した「ジェスチャーによるインタラクションデザイン革命」が起きていると指摘。ジェスチャーをデザインするうえで重要なポイントを、具体的な事例を交えて解説しました。講演の最後にダン・サファー氏は「人々が普段何気なく使っているジェスチャーをテクノロジーによって拡張するのが、我々デザイナーの使命だ」と会場に投げかけました。

iPhone 3GのUIから始まる未来のインタラクションデザイン

今回のフォーラムを締めくくるパネルディスカッションでは、ダン・サファー氏と上野学氏のほか、インフォメーションアーキテクトである株式会社コンセントの長谷川敦士氏が加わり、インタラク ションデザインのベストプラクティスである「iPhone 3G」と「Wii」について、その価値や世の中に与える影響が活発に議論されました。ダン・サファー氏はセッションの最後に、「我々デザイナーは、テクノロジーやユーザーのリテラシーとのバランスを保ちながら、革新的なアイデアを社会に発信していかなければならない」と語り、フォーラムを総括しました。


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