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三菱電機株式会社 ユーザー中心設計で描く企業サイト成功のシナリオ

2008年10月14日 掲載

DESIGN IT! magazine』vol.1のShowcaseを掲載しています。

三菱電機株式会社サイト リニューアル小史

大規模なリニューアル時は、その時々のユーザーのアクセス環境やデザイントレンド、最新技術をバランスよく取り入れながら進めていることがわかる。


  • 2000年
    • 10月 宣伝部デジタルメディアグループ設立

    • 当時のトップページ


  • 2001年
    • 4月 国内向けオフィシャルWebサイトをリニューアルオープン
    • 10月 新海外向けオフィシャルWebサイトオープン
    • 12月 主婦向け会員制サイト「シュフレー」立ち上げ
    • トップページのメニューから、
      ワンクリックでアクセス
      当時主流の800×600ピクセル
      (SVGA)
      以内のデザイン


  • 2002年
    • 3月 シュフレーのメールマガジン配信開始
    • 7月 URLを http://
      www.MitsubishiElectric.co.jp
      に統一
    • 12月 ご愛用者カードのWeb化(「製品登録サービス」立ち上げ)


  • 2003年
    • 4月 第2次国内向けオフィシャルWebサイトリニューアル
    • ナローバンド・ブロードバンドの
      双方に対応
      パーソナライゼーション


  • 2005年
    • 4月 第3次国内向けオフィシャルWebサイトリニューアル
    • 9月 三菱電機株式会社オフィシャルWebサイトISMS認証取得
    • 最新情報の発信
      ユーザビリティ・アクセシビリティの
      向上


  • 2006年
    • 4月 第4次 国内向けオフィシャルWebサイトリニューアル
    • 8月 企業情報サイトリニューアル
    • 10月 ISO/IEC 27001:2005
      JIS Q 27001:2006取得

    • Web2.0 の時代性を考慮した、
      ユーザーとの2wayな設計
      女性も意識した柔らかいデザイン
      目的のページへの辿り着きやすさの
      改善


  • 2007年
    • 6月 株主総会翌日に最新の07年版企業情報をリリース
    • 12月 基本デザインフォーマット変更を伴う大幅リニューアル
    • 大幅リニューアルのウェブ画面


  • 2008年
    • 事業情報サイト(法人向け)新規立ち上げ
    • 事業情報サイト(法人向け)

大規模リニューアルだけが、改善のタイミングではない


図4 通常のページ(左)と、Simplewebが自動生成したテキスト版のページ(右)

このような大きなリニューアルを定期的に実施している他、細かな機能の追加も、可能な部分から随時対応している。

例えば2005 年の6月には、Webページをテキスト版に変換するサービスの「SimpleWeb」(ソシオメディア社提供)を導入してアクセシビリティの向上に対応している。ちょうど、JISによってWebのアクセシビリティの規定が盛り込まれ、そのための対応が必要となった時期であり、躊躇なく採用に踏み切っている。

また、情報へのアクセスのしやすさという点でも、機能改善を続けている。

「アクセス数の推移から、トップページに掲載する情報の構成を変更するということはもちろんですが、個人のお客様、法人のお客様、それぞれを対象にした製品一覧や50音別の製品一覧、そしてサイト内のキーワード検索など、ユーザーが少しでも早く目的のページにたどりつけるような工夫を継続しています」(粕谷氏)。

図5 画面キャプチャ付き検索結果(MARS FINDER)
検索結果には画面キャプチャが付き、
高齢者や初心者にもわかりやすい

特にキーワード検索については、2006 年夏に追加した検索機能の「MARS FINDER」(マーズフラッグ社提供)による画面キャプチャ付きの検索結果の表示が好評だという。文字だけで結果を見せるのではなく、同時にページの縮小画面を表示しているのだ。こうすることで、ユーザーは検索結果の中から目的のページを探しやすくなる。

さらに「検索結果から、ページごとのアクセスの頻度がログとなって残ります。これを基に検索結果の表示順を変更していきますから、ユーザーはよりタイムリーに必要な情報にアクセスすることが可能になります」と粕谷氏は話す。

また、法人向けのページでは三菱電機の関連会社の製品も紹介しているが、これはビジネス機会の創出につながっているという。

「主にSEO対策だったのですが、法人向け製品紹介のページでは事業カテゴリから個別の詳細情報ページに至るまで、それぞれのランディングページを、いくつか用意しています。これによって、外部の検索サイトからの誘導の機会を増やし、三菱電機グループ全体のプレゼンスを向上させています」(同)とのことだ。

CMSを中核に据えて、充実したコーポレートサイトへ

図6 サイトプリントシステム
ブラウザで表示する際には画像であるタイトルを
印刷時にはテキストに差し替えるなどの細かな調整を、
CMSのテンプレート機能を活用して実現

企業サイトには、ここまで見てきた製品情報のほかに、コーポレート情報もある。コーポレートサイトは製品情報と比べると地味な存在に見られがちだが、同社ではここにもきちんとテコ入れを図っている。

その目的について、粕谷氏は次のように話す。「三菱電機のようなメーカーの場合、コーポレートの情報は新卒採用を目指す学生や、IR情報を確認したい投資家が利用者の大多数を占めます。ところが、それまでは掲載している情報に横のつながりがなく、学生に就職活動の情報は提供できても、研究開発や環境報告といった三菱電機自体への興味を引くような導線が弱かったり、投資家には株価に関連する情報に加えて、CSR(用語解説参照)への取り組み状況を結びつけるといったことができていませんでした」。

そこで同社は、コーポレートサイトを充実させることは企業価値の創出につながると考え、2007 年から順次、前述のCMSの導入と併せて刷新に着手していった。

ここで、CMSが果たした役割は大きく2点あるという。

1点目は、ワークフローの改善。CMSの導入によって期待できる効果の中ではよく挙げられる項目だろう。「コーポレートサイトは、複数の担当部門によって運営されています。CMSを導入することで、各部署で入力されたコンテンツの確認と承認が迅速かつ円滑になりました。例えば投資家情報の更新では、株主総会直後に業績ハイライトをはじめとした経営情報を掲載できるようになりました。これまで1週間近くかかっていた更新が、大幅に短縮できたのです」(粕谷氏)。

2点目は「サイトプリントシステム」(コム社提供)における貢献だ。同社におけるサイトプリントシステムの意味は、単にページの内容をきれいに印刷するというだけに止まらない。それまで、冊子として発行していた企業情報系印刷物を廃止し、すべてWebページによる情報発信に切り替えている。いわゆる「ワンソースマルチユース」を実現する要の機能のひとつになっているのだ。

その仕組みを見てみよう。同社ではCMSのテンプレート機能を使って、ブラウザ表示用のページと印刷用のページを生成している。また、テンプレートを作成する際には、ページのレイアウトを類型化し、それぞれの表示の美しさを追求した。この結果、CMSでなければ実現できない複数の表示形式への対応を、CMSで生成されたページらしからぬ自由度の高いレイアウトで実現している。一般的には、Webページで印刷対応する場合、CSS(用語解説参照)を調整する程度なので、そのこだわり方の違いが際立っている。

さらに「サイトプリントシステムでは、ページごとの印刷ボタンで印刷できるだけでなく、必要な情報のまとまりごとに一括して全ページを印刷する機能を付けました。例えば、会社概要の全て、投資家情報の決算だけといった形で、全ページや必要な部分のみを選んで印刷できます。こうした対応は、紙のアニュアルレポートではできなかった、Webサイトで情報発信する際の長所でしょう」と粕谷氏は胸を張る。

こうした取り組みの結果、コーポレートサイトへのアクセス数も従来の約2.5倍に増えたほか、日経の企業イメージ調査では前年の181位から65位に上昇。また、就職人気ランキングやIRランキングでも順位が飛躍的に向上し、『日経パソコン(2007年10月8日号)』誌による企業サイトの評価で17位にランクされるなど、大きな成果へと結びついていったのだ。

ただし、同社と同じようにデザインガイドラインやCMSの導入を図ったとしても、それだけで同様の効果が得られるわけではない。

この点について、「Webサイトでは多くの部門の情報を掲載していくため、様々な部署と横断的につきあっていけることが大切です。Webサイトを刷新していく上で最も重要なのは、そういった関係者を巻き込み組織化して進めるということです。宣伝部は、メディアとの連携や洗練されたデザインで制作するのと併せて、他の多くの部門と連携をとりながらアクションを起こすといった進め方に慣れています。三菱電機のWebサイトの運営母体を宣伝部内に持っている効果はそこにあったのです」と粕谷氏は説明している。


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