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審査を終えて

2008年11月14日 掲載

DESIGN IT! magazine』vol.1の特集「Feature-2」を掲載しています。

地方自治体Webサイトのユーザビリティ評価
(引越部門)2007授賞式

主催者側からはそれぞれの優秀サイトについて、制作における考え方やプロセスについての寸評があった。

一方、各表彰サイト側からは、設計から運営にわたるプロセスにおける、「区民の視点」「市民の視点」をWebの機能や提供する情報に反映していく方法について、それぞれの取り組みが紹介された。

続く講演会では、CMSによる運用フローの生産性向上が、利用者に与えるユーザー体験や信頼性 の向上につながっていくことを説いた。併せて、CMS 導入の際に運営者が検討すべき5つのポイント─「サイトの目的や性格の明確化 」「サイトの管理方法の決定 」「社内体制の整備」「導入先の決定 」「現場での更新サイクルの定着」─を挙げた。そして、CMSを導入するだけでなく、各担当者による運用フローに対する意識の重要性についても言及した。

授賞式の様子
授賞式の様子

講演会の様子
講演会の様子

報告会の様子
報告会の様子

今回の審査プロセスの中では、ワークショップを通して審査員資格を付与しつつ審査を進めた。HCD-Netでは、こうした「評価者のためのスキル標準の認定」といった活動も進めていくという。多くの人が評価者としての一定の水準の手法を知ることで、人間中心設計に対する意識も底上げしていくことを目指している。

また、観光といった地域ごとに異なる情報ではなく、今回の引越し手続きのような一般化しやすい情報を対象にして、自治体サイトが共通で使える「公共サービスの標準サイト構造の提案」を、今後取り組むべき分野として計画を進めている。

今回のユーザビリティ評価の審査を統括する立場であった、HCD-Netの鱗原 晴彦氏、早川 誠二氏に、今回のユーザビリティ評価に至った経緯、そして人間中心設計についての今後の展開を聞いた。

人間中心設計をもっと多くの人が意識するために

「人間中心設計に取り組むきっかけは、大学卒業後、産業機械のデザインを手がけてきたことにあります」とHCD-Netの理事長・事務局長の鱗原氏。「コンシューマ向けの製品ですと、ユーザーが好き嫌いで製品を選ぶことができます。ところが、産業機械では選ぶことができません。ユーザーにとって複雑な操作を強いられるという厳しい状況の中で、ユーザーがパフォーマンスを上げられる産業機械の設計とは何かを考えてきました」。

同氏は地方自治体サイトの現状も、それと同様だと指摘する。「我々の税金で作っているサイトなのに、いざ、ある目的でWebサイトにアクセスしてみても、なかなか目的にたどり着けない設計も少なくない」。

今後は、交通機関の切符予約のような、社会インフラと密接につながるWebサイトについても評価対象を広げていきたいという。

「人間中心設計の意識を持たないままサイトの設計を進めてきたために、自治体サイトのユーザビリティがここまで向上するのに10年もかかってしまいました。人間中心設計のプロセスを知ることで、使いやすさを素早く改善していけるので、HCD-Netのような専門家がお手伝いできる環境を作っていきた い」と、鱗原氏は今後の抱負を話している。

「わかりやすさ」に取り組む視点が大切


HCD-Net
理事長・事務局長
鱗原 晴彦氏

HCD-Net
規格化/認定事業部 運営委員長
早川 誠二氏

「メーカーの製品マニュアルの編集を通して、利用者に提示する情報の分かりやすさについて考え始めました。単に見やすい、読みやすいというだけではなく、使いやすく、役に立つことを念頭に置くようになりました」。こう話すのは、今回の審査を主導したHCD-Netの規格化/認定事業部 運営委員長の早川氏だ。

「わかりやすさ」という曖昧な基準に対して漠然と取り組んでしまうと、漠然とした結果しか得られない。

「同じ目的のサイトでも、利用者層が異なれば、情報デザインの設計も変わってきます。地方自治体側からすると、漠然とした利用者像を特徴的なペルソナに類型化することで、設計の方針が見えてくるでしょう。逆に評価する側からは、どのようなペルソナを念頭にしながらサイトを作っているのかが見えてきます」。 

こうした取り組みは、Webサイトの立ち上げ時に一度だけというものではない。毎日のように追加される膨大な情報を整理し、掲載し続けていくためにも必要となるだろう。

「CMSを使ってワークフローを整理したり、担当職員の研修で知識の底上げを図っても良いでしょう。それぞれの地方自治体で最適なワークフローが構築できれば、分かりやすい広報活動を継続していけると思います」。


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DESIGN IT! magazine』vol.1の特集「Feature-2」を掲載しています。


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