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テクニカルコミュニケーションにおける、コンテンツマネジメントの新たな挑戦

2009年8月12日 掲載

Judy Ramey /ジュディ・ラメイ ワシントン大学

テクニカルコミュニケーションにおいて最も一般的な活動は、プロダクトに添付されるドキュメントを作成することである。コンテンツマネジメントのためのツールや戦略をドキュメントの作成に用いることは、テクニカルコミュニケーターにとってたいへん取り組み甲斐のある問題を解決してきた。しかし同時に、異なるオーディエンスのニーズに合わせてコンテンツをいかに修正すればよいのか、複雑なユーザタスクに対するガイドをどのように作成すればよいのかといった、新しい問題も提起している。

テクニカルコミュニケーションでは、オーディエンスを分析することや、本質的に異なるオーディエンスのニーズに合わせてコンテンツをカスタマイズすることが活動の中心となる。

オーディエンスが単に専門知識(初心者、熟練者)や職務(データ入力者、証券アナリスト)のレベルで分類されるなら、データベースから適切な情報のサブセットが選択され、修正なしに印刷物として、または電子的な形式で発行できる可能性が高い。

しかし、オーディエンスがより複雑な基準(教養レベル、サイトへの関与レベル、情報への感情的なつながり)で分類される場合は、単に断片化された情報を区別することで異なるニーズへの対処方法を見つけることは難しい。コンテンツマネジメントの強みからなる優位性を保持しつつ、情報をカスタマイズするにはどうすればいいのだろうか。実行可能な戦略がいくつかある。1 つには、特徴的なオーディエンスのニーズに合わせてコンテンツのかたまりの代替バージョン一式(データベース内に作られる、有用な余剰コンテンツといえる)を作っておくというやり方がある。もう1 つは、コンテンツのかたまりをドキュメントの下書きの状態で集めておき、その後、その下書きをオーディエンスのニーズに応じて最終的なドキュメントに編集するという方法だ。クエリの組み合わせと最終ドキュメントは、両方とも将来の繰り返し利用に備えてデータベースに保存される。どちらの戦略も CMS を複雑なやり方で使用することになる。

複雑なユーザタスク(機能の範囲を超えて作用する、ユーザのゴールや戦略)に対してガイドを行う試みからは、別の問題点が生まれる。ドキュメント(特にヘルプファイル)が、プロダクト内のコマンド、アイコン、他のウィジェットなどと1 対1 で関係する情報を含む場合、コンテンツマネジメント戦略は比較的単純なものになる。しかし、ドキュメントが機能指向からユーザタスク指向へ変わっていくと、再度、コンテンツマネジメントのためのタスクは複雑化する。最も分かりやすい例でいえば、1つのコマンドが多くの複雑なユーザタスクの役割を担うことになり、その時々で少しずつ異なる使われ方をするといった恐れがあるということだ。

ドキュメントの作成手法に関する現在進行中の抜本的な改革は、ドキュメント作成におけるコンテンツマネジメントの複雑性も急速に成長させるに違いない。

このように、テクニカルコミュニケーションにおけるコンテンツマネジメント戦略に対する多くの需要をかんがみれば、われわれは今後もよりパワフルで複雑なツールやシステムの継続的発展が期待できるに違いない。そして、テクニカルコミュニケーターとして最も求められるのは、これらのシステムを最も迅速に機能させることができるような「人間」ということになるだろう。

この記事は、Metatorial Services Inc. 設立者/代表のボブ・ボイコによる著作『Content Management Bible(2nd edition)』の邦訳、『コンテンツマネジメント パーフェクトガイド[デザイン・構築編]』(2008年、毎日コミュニケーションズ刊、ソシオメディア監訳)に掲載されたコラムから抜粋、一部編集したもの。

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