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テクパブ部門の行く末はいかに?

2009年8月12日 掲載

Bob Boiko /ボブ・ボイコ Metatorial Services Inc.設立者/代表取締役、ワシントン大学 情報学部教員

私はここアメリカで、危機に瀕している、あるいは瀕しつつあるテクニカルパブリケーション部門をたくさん知っている。テクニカルライティングは他国へ外部委託されつつある仕事だ。そこでは極めて有能な人たちが、嬉々として、しかも非常に低賃金でその仕事を行う。さらに、年々これらの部門の予算は削減される傾向にもある。スケジュールは圧縮され、そしてオーバーワークとエンジニア部門からもたらされるべき有用な情報の欠如により、品質が犠牲となっている。彼らが複雑な製品についての複雑な発行物を依頼され、企業が販売中の無限で多様な製品1 つひとつについて対応するよう求められるうちに、このすべての問題が発生してくる。

テクニカルパブリケーション部門の人々は、本質的には、世界経済のメインステージが自分たち自身に委ねられていることを知っている。彼らの仕事は現在の世界中の労働人口を支えるものであり、そして今や、オンデマンドで製品を製造するグローバルテクノロジー関連企業による、速いペースでめまぐるしく変化し続けるアウトプットを支えるものになっている。

テクニカルパブリケーション部門の人々が感じる疑問は、自分たちの存在を突然世界経済の中に見出した、非常に多くの他部門の人々が直面するものと同じだ。「われわれは、これを受け入れるのか、それとも戦うのか」。私の卑見では、テクニカルパブリケーション部門は、そのどちらも行うべきではない。組織内で自分たちの部門を再編し、さらに広い組織の中での新しい居場所を定めなければならない。そうすれば、新経済に求められる急速な変化に対応することができるし、世界規模の労働市場の中でも、価格ではなく価値に基づいて競争することができるようになる。

当然、どうやって再編すべきかという疑問は残る。その答えは、テクニカルパブリケーションに関与する人々が持つスキルの中にあると、私は信じたい。スキルのいくつかは、校正や編集のような一般的なものだ。1 つの現実としては、アイルランドやインドの労働者は、アメリカの労働者の賃金よりも少ない額でこれらの仕事を行うだろうということがある。それはまた、彼らがアメリカにおける同業者の多くと同じ、またはそれ以上のスキルを持っているという現実でもある。それでは、彼らにテクパブの仕事を任せればいいのではないだろうか? テクニカルパブリケーション部門で必要なスキルは、決して汎用的なものではない。顧客と製品、そしてその2 つを調和させる発行物の作成方法に関する深い知識は、一般的なものにはなりえない。自分たちの組織のために、自分たちの知識を疑う余地のない価値に変換する能力は、他のすべてのスキルを超え、重視され続けるだろう。

世界中で賃金格差がなくなる時(ところで、その方向に働くことは、そんなに悪いことではない)まで、アメリカをベースとする部門は、価格の上では競争することができない。ネットへの接続、あるいは落ち込んだ地方経済や地域経済とのつながりを持つあらゆる賢明な人は、その仕事をより低価格で行うことができるだろう。しかしながら、世界の賃金構造はさておき、的を射た専門知識とそれを応用する能力は、常に極めて高価であるに違いない。

この記事は、Metatorial Services Inc. 設立者/代表のボブ・ボイコによる著作『Content Management Bible(2nd edition)』の邦訳、『コンテンツマネジメント パーフェクトガイド[デザイン・構築編]』(2008年、毎日コミュニケーションズ刊、ソシオメディア監訳)に掲載されたコラムから抜粋、一部編集したもの。

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