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CMS+IA のデザインに向けて (2):IAや Web ディレクターが DITA から学べること

2009年8月21日 掲載

清水 誠

清水 誠

DESIGN IT! Forum 2009 のキーワードは「DITA」。
技術仕様や XML 規格、と表現されることもあるが、DITA の本質は技術ではなく、情報の再利用を促進するためのアーキテクチャの標準である、という点だと筆者は考える。技術者ではなくても、利用中の CMS が XML に対応していなくても、DITA から学ぶべき点は多いのだ。
今回は、Web の情報設計に関わるIAや Web ディレクター、ライター、編集者にとって DITA は何を意味するのかを考察してみよう。


Web とオンラインマニュアルの共通点

Web コンテンツとデジタル化されたヘルプやマニュアルの制作・管理は、共通点が多い。

PCのモニタやデバイスの液晶のような解像度が低く小さな画面では、じっくり読んだりページを素早くめくることができない。従来の印刷物と同じように長く書いても読まれないため、ぱっと見で理解できるような工夫が必要になる。

まず必要なのは、短く簡潔に書くことだが、情報量を減らすには限界がある。そのため、1つのコンテンツを複数ページに分割したり、概要のみをまず手短に伝えて詳細はクリック後に表示する等、レベル感に差をつけた分割・構造化も必要になる。

ただし、ナビゲーションは必要悪であり、なるべく避けたいところだ。例えば、用語集を一箇所に掲載してクリックさせるよりも、用語解説をあちこちに重複して掲載させたほうが良い場合もある。

このような編集を行っていく結果、Web コンテンツやデジタルコンテンツは必然的に

が多くなっていく。つまり、似たようなコンテンツがあちこちに散在してしまうのだ。

手作業の管理には限界

このような特徴を持つコンテンツを手作業で制作していくと、量が増えるにつれて管理が大変になってしまう。

例えば、突然決まった M&A により製品のブランド名が変更になったとする。この変更を公開中のすべての Web ページや今後増刷・発行する印刷物のドキュメントに漏れなく反映させるためには、どこで古いブランド名が使われているかを探し出だし、すべて変更していく必要がある。

この作業は手間がかかるだけでなく、変更漏れが発生しがちなため、誤情報を配信するというリスクを抱えているといえる。価格情報やキャンペーン情報を間違えた場合は、下手をすると訴訟沙汰にもなりかねない。

下手な構造化は自由度を奪う

このような状況を避けるには、同じコンテンツを一箇所で一元管理し、そのマスターの変更が全ての掲載先に反映されるようにするのが理想的だ。これができれば、ライターやディレクター、マネージャーは単純なコピーペースト作業や誤配信の不安から開放される。昔からワンソース・マルチユース(これは和製英語であり、英語では Single-Sourcing と呼ぶ)として、印刷会社でも夢物語として長い間語られてきた概念だ。

簡単に実現でき、よく行われているのは、コンテンツを細かい単位に分割してデータベースに格納し、それをテンプレートに出力するアプリケーションを開発する、という方法だ。同じように項目を細分化し、テンプレートに流し込むことができる CMS もある。

ただし、コンテンツを切り刻んで無味乾燥なデータにしてしまい、テンプレートに単純に流し込むだけでは、コンテンツの表現力や柔軟性が失われ、価値も下がってしまう。コンテンツは、コンテクストに応じて柔軟に組み替えたり、バリエーションを持たせたりする必要があるのだ。一度定義すると気軽に変更できないようなシステムでは、本末転倒の状態になってしまう。管理しやすく、かつ自由度や柔軟性が高い構造管理の方法はないだろうか?

DITA はコンテンツの進化論を支えるアーキテクチャ

そこで登場したのが、DITA(Darwin Information Type Architecture)だ。

DITA は製品でも技術でもなく、XML の標準作法といえる。

コンテンツからフォーマット要素を取り除いてモジュール化することで、コンテンツの共有や再利用を促進する。XHTML と CSS をもっと汎用的にしたもの、と考えると分かりやすいかもしれない。XHTML はページの記述方法だが、DITA ではコンテンツをページよりも細かく、単体で独立する「トピック」と呼ばれる単位で管理する。トピックが集められ、フォーマットされてページやドキュメントが構成される。

DITA は標準(スタンダード)である

さらに重要なのが、DITA はコンテンツの構造化や管理から属人性を排除し、組織内さらには組織を超えた標準を確立することを目指している、という点だ。

例えば、XML はデータの記述方法を標準化することで、システム間のデータ交換を容易にすることに成功した。また、最近のハイエンド CMS では、異なる CMS リポジトリ間でのデータの入出力を可能にするための標準規格であるContent Management Interoperability Service(CMIS)への対応が進んでいる。

さらに、管理される情報そのものを構造化する方法を標準化できれば、情報を組み合わせていろいろなページやサイト、メディアで再利用することができるようになる。1つのリポジトリでコンテンツを一元管理し、Web 用の CMS と印刷物の自動組版システムの双方にコンテンツを配信する、ということも実現しやすくなる。

情報設計の極意が満載

このように、DITA を技術仕様ではなく、情報の構造化や標準化に関するノウハウが詰まった集大成として捉えると、学べることはたくさんある。IAや Web ディレクター、ライター、編集者、CMS コンサルタントが、自己流の情報設計から脱却し、大きくステップアップすることにつながるはずだ。

残念ながら日本語のリソースはほとんど無いので、まずは Forum 当日のセッションや翌日のワークショップ、または DITA コンソーシアム関連のセミナーなどで情報収集を始めるのがオススメだ。

この記事は、DESIGN IT! Forum 2009 スピーカーである、清水誠氏より寄稿いただいたものです。

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